AIと土偶
社会福祉士 佐藤 信行
「これって、ホバークラフトで移動する砂漠戦仕様のモビルスーツですかぁ?」
グループホームで入居者さんと一緒に縄文式土器の本を眺めていた時、遮光器土偶の写真を指さして二周り程年下の同僚が言いました。僕は、平成生まれの彼女がファーストガンダムを知っていたことに驚き、同時に共通の話題ができたことに嬉しくトキメキました。
縄文時代は、弥生時代以降現代に至るまでの約2.500年間よりも5倍程長い歴史を有し、各地から出土される土器や石器は縄文時代が高度な技術や文化を誇っていたことを証ししてくれます。
人類のイノベーション(技術革新)を時系列に並べると、石器・青銅器・鉄器(刃物)、火を制御する、梃子(運搬)、コロ(運搬)、活版印刷(情報)、蒸気機関(移動)、内燃機関(エネルギー)、IT(情報)、AI(人工頭脳)です。その時々のイノベーションを制するものが時代を制してきました。最新イノベーションのAIを、人がヒトを創造する技術と捉えるならば、私はそのルーツは縄文時代の土偶に遡ると考えます。
縄文時代のイノベーションは、石器刃物を用いて切る技術・火を制御する技術です。それらの技術を用いて作られたものは衣服と食事と住居と土器。その中で火の制御が一番難しかったのは土器作りと推測します。故に、縄文時代は、土器を上手に作ることがステータス。上手に土器を作る技術を有する者が時代を制し、日常から祭事に渡り様々な目的に添った土器が作られたと考えます。特に土偶は、未知なるものへの備えが唯一祈念祈祷だった時代に『未知なるものへの畏怖や感謝、安心安寧、生命の誕生、豊穣を願い、森羅万象の厄災を祓い、人に代わって何かを為すべく、人に為し得ないことを為させるべく』特別な想いを込めて作られたと考えます。
歴史が繰り返されるなら縄文時代の人が土偶に込める想いと、現代人がAI(ディープラーニング、ビックデータ、高速演算)に込める想いは『安心安寧、生命の誕生、豊穣を願い、森羅万象の厄災を祓い、人に代わって何かを為すべく、人に為し得ないことを為させるべく』に『未知なるものへの畏怖や感謝』を除き、差違は無いと考えます。私は、現代の作陶には、時空を越えて人類最初のイノベーションに立ち返って縄文時代の人の営みを再現し、その思考を追体験し、想いを想像することで、AI時代を生きる現代人が将来抱える問題を、先行事例として、解決するための示唆が備えられていると考えます。
私はその示唆とは、古代の人が大切にしていた『未知なるものへの畏怖や感謝』が鍵になると思います。
「宇宙戦仕様のリックドムより、ホバークラフトが着いた砂漠戦仕様のドムの方がカッコいいよね。」と僕が言うと、「わたしは、一つ目、禿頭、左右非対称のMS-06量産型ザグの方がリアルだと思うな。でも、接近戦では外装ケーブルが致命的なのよねぇ~」
・・・一本取られました。